64式7.62mm小銃の後継として豊和工業と防衛庁技術研究本部(現:防衛装備庁)によって共同開発された国産のアサルトライフル(突撃銃)です。1989年に制式採用され豊和工業が製造も行っています。
PKO(国際平和維持活動)などの海外派遣やアメリカなどの多国間訓練を念頭に入れて開発されたこともあり、NATO標準弾SS109の5.56×45mm弾に適用させたのも特徴の一つです。これは共同演習を行うアメリカ軍が使用するM16ライフルも同様です。
1960年代以降から世界的にも、7.62mmなどの大口径低初速弾から5.56mm等の小口径高初速弾が使用できる小銃が求められる様になりました。これは「目標(敵)を殺傷する」よりも「負傷させて救護に人員を割く」という戦略的目的。銃の反動低減、有効射程向上、貫通力の増加などの利点が多いためでもあります。
7.62mm弾に比べれば殺傷能力は低いかもしれませんが、高速で撃ち出される5.56mm弾による銃創(銃弾による傷)は腕に命中すれば骨を砕き筋肉を裂くほどの威力になります。
小銃の構造
89式5.56mm小銃の素材にはプレス鋼板や強化プラスチックが多く使われ、64式7.62mm小銃の4.4kgに比べて約1kgも軽量化。銃を構成する部品点数も100点程と約10%削も削減されています。そのため携行する隊員の負担軽減や分解・結合も容易になりメンテナンス性の向上もはかられています。
89式5.56mm小銃の基本タイプは固定式の銃床ですが、空挺隊員や戦車搭乗員向けに取り回しが容易に行える銃床折り曲げ式の2種類があります。
射撃方式は単発と連発以外に、3点制限点射(スリーショットバースト)機能があり、発射切り替えコック部には「ア・タ・レ・3 (ア:安全装置、タ:単発、レ:連射、3:3点ショット)」と刻印されているのは有名です。駐屯地記念行事などの一般開放イベントでの装備品展示で見ることがありましたら確認してみて下さい。
89式5.56mm小銃の先端には89式多用途銃剣が装着できます。記念行事の式典で敬礼の代わり捧げ銃時に行う"付剣(つけけん)"。敵との近接格闘時にも有効に使われます。 他にも2006年に制式採用された「06式小銃擲弾」があり、これは銃口部に装着して発射する小銃発射型のグレネード弾で、個人や小隊行動時に敵上方で擲弾を炸裂させて簡易的な面制圧が可能な装備になっています。
2011年までに約11万挺が製造されています。1挺が約30万円前後(年度により変動)と海外の小銃に比べればかなり高価な小銃になっています。