前進する部隊を妨害するため敷設された地雷原を爆破・啓開する自走式の地雷原処理装置。1988年から開発が始まり1992年に制式採用された施設科部隊の装備です。
これまでにも棒の先端に爆薬を付けた爆薬筒や組み立て式の爆薬投射機"70式地雷原爆破装置"など、地雷原を爆破処理する器材はありました。ですが70式地雷原爆破装置での導爆索投射でも長さ約100m × 幅約0.5mの人員通路までしか地雷原啓開ができませんでした。さらに車両が通れる様にするには追加での爆破処理やブルドーザーなどの重機で道を広げる必要がありました。
そこで一度の爆破処理で車両を通過させられる機材として92式地雷原処理車が導入されることになります。また同時に導入された地雷原処理システムとして90式戦車に搭載して使用する"92式地雷原処理ローラー"も開発されています。
車体構造として、73式牽引車の車体をベースに地雷原処理ロケットを2発格納できる発射機(ランチャー)を上部に搭載。エンジンには同じく73式牽引車を基本構造としている87式砲側弾薬車と同様のデトロイト・ディーゼル社製が使われています。
そのため不整地でも約50km/hでの速度で走行できる機動力あり戦車などの機甲科部隊と共に行動できるので、必要な時に地雷原を無力化して部隊前進を支援できます。
その機甲科部隊に随伴して行動するため車体には装甲が施され、機関銃等の自衛火器はありませんがレーザー検知器と連動した発煙弾発射機(スモーク・ディスチャージャー)を搭載。ロケット投射操作も車内から行えるので搭乗員の生存性も確保されています。
他にも車体前部には排土板(ドーザーブレード)も備えられています。
地雷原啓開92式地雷原処理車の地雷原啓開方法として、まず地域展開後に地雷原処理ロケットを格納した発射機(ランチャー)を起こして投射体勢をとります。
準備完了後、処理ロケットを投射。発射から2秒ほどでブースターの燃焼が終わり慣性で飛翔を続けます。
ロケット内部から制動用パラシュートが展開。26個の爆薬付きのワイヤーが引き出され地雷原へと落ちていきます。この時にロケット本体と処理車が制動索で繋がっているので、規定距離まで伸びた爆薬付きワイヤーを車体で制動させてピンッと線状に張られた状態で落下させられます。
最後に爆薬を起爆させて処理完了となります。
地雷原啓開能力としては、連結できる爆薬力の最大量で"長さ約300m×幅約5m"の範囲を一度に爆破処理できます。
東富士演習場で行われる富士総合火力演習や第7師団・東千歳駐屯地創立記念行事では、通常の1/4程度の爆薬量の演習弾による処理ロケットの投射と爆破啓開が見られます。実際の爆薬量ではありませんが起爆時には衝撃波(ソニックブーム)が目視でわかるほどです。
全国の施設科部隊に配備されています。