84mm無反動砲M2は1949年にスウェーデンで開発されたカール・グスタフの名称でも知られている無反動砲(バズーカ)です。
陸上自衛隊には89mmロケット発射筒M20の後継として1979年から導入が開始されました。1984年からは豊和工業による国内でのライセンス生産も行われています。
"無反動砲"とは、射撃時の反動を最小限に抑えた火砲で、反動を打ち消すために砲弾発射と同時に砲口逆方向の後方へ、大量のガスや樹脂破片を高速噴射します。前方・後方の衝撃を同じにすることで、射撃時の反動を打ち消すことができます。
そのため迫撃砲や榴弾砲などの火砲に比べて、射撃時の衝撃や圧力を受け止めるための構造や砲自体の材料の厚みを抑えられます。砲全体を小型に作れるのも特徴です。
その代わり、後方噴射による衝撃緩和と軽量化で砲弾の初速や命中精度が低くなっています。また、後方への爆風(バックファイア)による噴煙(土煙)で、射撃地点を敵に特定されやすいのも弱点です。車内や建屋内では射撃が行えない(後方に爆風による被害が及ぶ)など撃つ場所を選びます。実際に射撃を行う際には後方に人がいないかの安全確認を徹底します。
84mm無反動砲の構造
84mm無反動砲M2の構造として、特殊鋼製の砲身(筒)に照準器、グリップ、肩当てが取り付けられています。射撃時には砲身後部をスライドさせて砲弾を装填します。
戦車などの装甲車両に対しては命中精度の高いロケット補助推進弾と無反動砲の特性を組み合わせた「対戦車榴弾(HEAT弾)」が使用されます。
対戦車榴弾以外にも、敵人員に対しての「榴弾」、視界妨害などの「発煙弾」、夜間戦闘時に用いる「照明弾」なども使用可能です。
84mm無反動砲は01式軽対戦車誘導弾や110mm個人携帯対戦車弾に比べ、とても汎用性が高い火砲になっています。
当初、84mm無反動砲は01式軽対戦車誘導弾に更新される予定でしたが、誘導弾1発のコストが高く目標に対しての費用対効果や装備自体の汎用性の問題などから別の後継装備が検討される様になります。
2012年からは新型の「84mm無反動砲(B)M3」の調達が始められています。M3は外観も近代的になり、砲身外装にも炭素繊維を使用して重量も8kgまで軽量化されるなど様々な改良が施されています。
84mm無反動砲は全国の普通科部隊に配備され、小銃小隊1個班に1門を装備して運用されています。