戦闘時の偵察・斥候(せっこう)や部隊伝令、災害時の被害状況把握、駐屯地間の連絡など、さまざまな用途に使用されるオフロードタイプのオートバイ(自動二輪車)です。4輪の車両よりも小型・軽量で、その機動力を活かした幅広い使われ方がされています。
陸上自衛隊では偵察任務にオートバイを使用していますが、これは世界的には珍しい運用方法です。世界各国の軍隊では後方支援や基地間連絡など、基本的に兵站(へいたん)での利用に限られています。
戦闘時には、まず敵部隊の状況把握のため、ヘリコプターなどの航空機で上空から偵察を実施します。その後、より詳しい敵情を把握するため小型で発見されにくいオートバイで地上偵察を行い詳細情報を収集します。
実際に敵部隊への偵察行動の際には、銃撃をうける場合もあります。その場合、オートバイに立ち乗りして小銃射撃の実施。下車後にオートバイを盾にして銃弾を避けながら状況把握や反撃をします。他にも、車両に身を隠しながら離脱する"通称:忍者ダッシュ"など、非装甲で非力に感じるオートバイをうまく使って戦闘に活用しています。
また、離島への上陸時などにゴムボートへ搭載して運搬したり、ヘリコプターの機内に搭載して空輸するなど小型・軽量なオートバイならではの運用方法も行われています。
近年、増加傾向にある災害時にも、瓦礫や土砂崩れなどで進入困難となった地域へも、オフロードバイクでなら障害物を乗り越えて道なき道を進んでいけます。
使用車両
偵察用オートバイといっても、陸上自衛隊専用に開発された車両ではなく、市販車を改良した車種が使用されています。
市販車両にOD色(オリーブドラブ)の塗装を施し、エンジン前面と前照灯に鋼材製フレームガードを設置。車体後部に無線機と荷物が載せられるキャリアを備え、ハンドルの操作部には灯火管制スイッチなどを追加しています。
基本的に、駐屯地内や演習場ではサイドミラーを外して運用されていますが、一般道を走行する際には道路交通法にあわせてサイドミラーを取り付けて走行します。
長らく偵察用オートバイにはホンダ製のXLR250Rが使用されてきましたが、新排ガス規制に対応させる理由などから2001年からカワサキ製のKLX250に調達を切り替えています。
戦車などの機甲科内の偵察部隊に配備されていますが、普通科や特科部隊の情報小隊等にも導入されています。