これまで内乱や暴動など海外で不足の事態が起きた場合に、邦人を保護して安全に運ぶ方法がありませんでした。そのため海外に駐在している邦人を安全に陸路輸送する方法として、新たに輸送防護車が配備されることになりました。
配備されている車両はオーストラリアのタレスオーストラリア社製の"ブッシュマスター装甲車(MRAP)"を輸入購入しています。そのため日本国内でのライセンス生産は行われていません。海外製の車両ですが購入時にハンドル位置を左右で選択可能で、配備車両は日本の道路事情にあった右ハンドルになっています。
名称にある"MRAP"とは「Mine Resistant Ambush Protected:耐地雷伏撃防護車両」の略で、車両が地雷攻撃を受けても、その衝撃に耐えて乗員を守れる性能を持つという意味があります。ちなみにMRAPはアメリカ軍独自の呼称で、オーストラリアなど諸外国では"MRVs:Mine Resistant Vehicles(耐地雷車両)"と呼ばれることの方が多いです。
輸送防護車の大きな特徴なのが車体底部がV型構造な点です。この耐爆構造により起爆した地雷やIED(即席爆弾)の爆風を車体左右に分散して、搭乗員を爆発の直撃から守れる様になっています。
輸送防護車の車体構造
輸送防護車の足回りには、重装輪回収車のベースになっている重装輪車と同じ国際規格のコンバットタイヤが使われています。被弾してもある程度の走行が可能です。
車体左側面には"樹脂製の燃料タンク"が備わっています。燃料タンクを車内ではなく車体外部(側面)に配置することで、地雷の爆発による燃料タンクの誘爆を避けられます。万が一、燃料タンクが吹き飛んだとしても外部タンクのみの被害で済みます。
もし燃料タンクに銃撃をうけたとしても再現性のある分厚い樹脂製のため、燃料漏れも最小限に抑えられます。また金属製タンクとは違い跳弾火花による引火の心配もありません。ちなみに車体内部の安全な場所に予備タンクが備わっているので、外部タンクが無くなっても戦闘地域から離脱できる程度の走行が続けられます。
車両の乗り降りには車体後部にある大型扉からのみ行えます。運転席に搭乗するドライバーもこの後部ドアから乗降します。窓も開閉しない密閉性の高い車両なので、外部とのコミュニケーションを取るために右側運転席の"窓下部に小さなハッチ"が設けられています。
戦闘車両ではないので固定武装はありませんが車体上部に自衛火器として5.56mm機関銃MINIMIを搭載できる銃座が備わっています。PKO等の国際任務の際に車上で機関銃を構える隊員を電線やワイヤートラップなどから守るワイヤーカッターも車体上部前方に設置されています。
2015年に導入後、まず最初に宇都宮駐屯地の中央即応連隊に4輛が優先配備されています。