主に国賓や内閣総理大臣などの要人を運ぶために使用される要人輸送専用ヘリコプターです。1986年に導入されたAS-332Lシュペルピューマの老朽化に伴い、同機体の発展型となるEC-225LPスーパーピューマを後継として導入しました。
EC-225LPは国内でのライセンス生産などは行わず、全機フランスのエアバス・ヘリコプターズ社(旧:ユーロコプター社)からの輸入により取得しています。配備数も3機と少なく珍しい機体になっていて、木更津駐屯地の第1ヘリコプター団 特別輸送ヘリコプター隊にのみ装備されています。
この"特別輸送ヘリコプター隊"は「自衛隊法第100条の5:国賓等の輸送」に基づいて任務が行われ、「防衛大臣は国の機関から依頼があった場合に、航空機による国賓、内閣総理大臣その他政令で定める者の輸送を行うことができる」とされています。
部隊の始まりは1985年9月に編成された政府専用ヘリコプター隊が前身になっていて、翌年1986年12月には特別輸送飛行隊に部隊が改められています。そして2008年3月に現在の特別輸送ヘリコプター隊に改編され国賓輸送などの任務が行われています。
EC-225LPの機体構造
EC-225LPはAS-332Lの改良型として開発された民間仕様機体で、胴体の延長やエンジン出力の向上、トランスミッションの強化などにより輸送可能人数の増加や、飛行時の機体振動の軽減もされています。
他にもメインローターのブレードが4枚から5枚に、テールローターは5枚から4枚に変更。機体後部下のトランク部が張り出しているなどの変更点がみられます。またコックピットにMFD(多機能ディスプレイ)が使用されているので、アナログ計器に比べて視認性の向上も図られています。
陸上自衛隊に納入されている機体にはいくつかの改修が行われています。操縦席周辺への防弾板の設置やエンジンの排熱温度を下げるIRサプレッサー(赤外線排出抑制装置)を追加しています。ちなみにIRサプレッサーはエンジン排気口からの排熱を抑えて赤外線誘導ミサイルの追尾を軽減してくれる装置です。
非常時の安全対策として緊急用筏(いかだ)や緊急用着水装置なども備えています。