1964年から開発が始まり1979年に採用された"対戦車"と"対舟艇戦闘"が行える多目的ミサイルです。陸上自衛隊として初となる対戦車誘導弾(ミサイル)"64式対戦車誘導弾(64MAT)"に続いて開発されました。"79重MAT"と略して呼ばれています。
誘導弾の装置構成として、発射機2基(1型・2型)、照準器、分電器、コードリールなどを1セットとして運用します。装置自体は1/2tトラック(73式小型トラック)2両に搭載して射撃する展開地域まで移動します。地上におろして装置を組み立てるため、64式対戦車誘導弾の様に車両から射撃することはできません。
ただし、車両搭載型として89式装甲戦闘車の砲塔側面部分には79式対舟艇対戦車誘導弾の発射機が2基搭載され、車上から射撃できる様になっています。
79式対舟艇対戦車誘導弾(79重MAT)も64式対戦車誘導弾(64MAT)と同じ誘導弾にケーブルが接続された有線誘導です。有線式の場合、誘導弾としてのコストが比較的安くできることや、電波妨害などにも強いのがメリットになります。その反面、誘導線(ケーブル)の長さに制限があったり、目標に向かって飛翔するまでの間に誘導線が障害物に引っ掛かる場合には使用できないなど、デメリットが多いのも事実です。
使用する弾頭は対象目標によって異なり、対戦車戦闘時には成形炸薬弾頭を使用する"対戦車榴弾"、対舟艇戦闘には磁気信管を使用した"対舟艇榴弾"を使いわけて目標に対処します。上陸用舟艇を撃破するため誘導弾を強化して大型化しているため、誘導弾自体の重量が33kgにもなっています。
射撃・照準方法
79式対舟艇対戦車誘導弾には光学式半自動誘導方式が採用されているため、目視照準のみだった64式対戦車誘導弾と射撃・照準方法が異なります。
射撃方法としてまず、射撃手が目標を照準したのちに誘導弾を発射。誘導弾に付属しているキセノンランプから発せられた赤外線ビーコンを照準器の赤外線センサーで射撃手が捉えます。誘導管制装置が自動追跡して射撃手が照準器とのズレを補正しながら目標へ誘導していきます。
このため、目標に誘導弾が命中するまで射撃手が照準し続ける必要があったり、誘導弾自体の飛翔速度も200m/秒とそれほど高速ではないため、命中まので間に敵に見つかって反撃される危険性がリスクとしてあります。
自動追尾でなはない79重MATには射撃技術を効果的に習得するために、学校や師団などに対舟艇対戦車誘導弾用トレーナーというシミュレーターが用意されています。
1995年までに約250セットが調達され、全国の普通科連隊・対戦車中隊や小隊などに配備されています。
本誘導弾も旧式化により後継となる誘導弾が開発されています。高機動車に発射機を搭載した96式多目的誘導弾を開発し、装備の更新を進めようとしましたが、システム自体のコストが高価になってしまい配備が進みませんでした。
この教訓を活かして新たに開発されたのが、同じ高機動車搭載型の"中距離多目的誘導弾"です。2011年から配備が始まり、順次こちらへの更新が進められています。