UH-1H/Jは世界初の量産型汎用ヘリコプターUH-1イロコイが原型となっているベストセラー機です。
陸上自衛隊には"ひよどり"の愛称で運用されていた"UH-1B"の後継機として1973年にUH-1Hを配備しました。1993年からは富士重工業(現:SUBARU)とベル社により共同改良された日本独自のJ型(UH-1J)に調達を切り替えます。UH-1H/Jは調達数からしても陸上自衛隊を代表する主力多用途ヘリコプターだと言えます。
機体の開発は、アメリカのベル・エアクラフト社(現:ベル・ヘリコプター・テキストロン)、エンジンをライカミング・エンジンズ(現:ハネウェル・エアロスペース)により行われ、日本では機体を富士重工業(現:SUBARU)、エンジンを川崎重工業により国内でライセンス生産が行われています。
UH-1の特徴としてキャビン上部にエンジンを配置したことで、乗員が搭乗する空間を広く確保できています。またH型ではB型と比べて胴体が延長され、キャビン内に搭乗できる乗員が7名から11名まで増加しています。人員だけではなく偵察用オートバイを機内に最大2台乗せて空輸することも可能になっています。
J型(UH-1J)
UH-1Hを改良・強化した"J型"にはさまざまな機能向上が行われています。
エンジンを対戦車ヘリコプターAH-1Sコブラと同じT53-K-703ターボシャフトエンジンに換装。出力が900SHPから1134SHPに増強されています。
このエンジンの排気口付近には排熱を感知して飛翔してくる赤外線誘導ミサイルの照準をそらす赤外線妨害装置(IRジャマー)が備わっています。
コックピットの計器類は暗視装置(暗視ゴーグル)にも対応し、夜間飛行能力の向上も図られています。また機首下部には前方赤外線監視装置(FLIR)を搭載している機体もあります。
外観からもわかる様に機首上下にはワイヤーカッターを装備し、飛行時に電線などをローターに巻き込んでの機体損傷防止処置も施されています。他にもパイロット座席とエンジン周辺を防弾板で防護するなど生存性の確保もされています。
多用途ヘリということもあり、固定の武装はありませんが側面ドアを開放して12.7mm重機関銃 M2などを搭載してドアガン射撃が行えます。武装以外にも追加装備としてリアルタイムで映像を送受信できる映像伝送装置、空中から地雷を撒いて即席で地雷原を構築できる87式地雷散布装置などが搭載できます。
また、機体を空中でホバリングした状態で患者を吊り上げて機内へ搬入できるホイスト装置も搭載されています。河川氾濫などで取り残されてしまった方を吊り上げて救助する場合にも活躍しています。
UH-1Jの後継機としてUH-60JAが導入され入れ換わる予定でしたが、調達コストが3倍であるなどの理由で進みませんでした。現在(2019年)は、ベル社とSUBARUが共同開発した"SUBARU BELL 412EPX"をベースに「UH-X試作機」の実用試験が行われています。
これまでにJ型だけでも130機が調達され、各方面隊や師団等の航空隊に配備されています。