UH-60JAはUH-1Jの後継として採用された多用途ヘリコプターです。
アメリカ軍のUH-60ブラックホークを自衛隊仕様にした機体で、当初はUH-1Jとの入れ替えが計画されていましたが、1機あたりの調達価格が高価なため現在でも平行配備がされています。
開発はアメリカのシコルスキー・エアクラフト社で、自衛隊に導入されている機体は三菱重工業により国内でのライセンス生産が行われています。
エンジンもジェネラル・エレクトリック社のT700-GE-700をIHIがライセンス生産しています。
原型は、UH-1の後継機をめざして1976年に開発が始められた機体で、1985年5月にUH-60Aの量産型が引き渡されます。
1989年にはGE製のエンジンに換装してトランスミッションを改良したUH-60Lが製造され、アメリカ陸軍に1500機以上が配備される予定になっています。
輸出仕様のUH-60は自衛隊以外にも、オーストラリア空軍やサウジアラビア軍、コロンビア軍など多くの国々で使用されています。
日本では、陸海空自衛隊で運用されていて、航空・海上自衛隊では救難ヘリコプターUH-60Jとして使用されています。
ちなみに海上自衛隊で運用されている哨戒ヘリコプターSH-60J/Kは、艦載用の改修が施された機体です。
構造的にはロータープレードの折りたたみ自動化、甲板に合わせて尾輪位置を中央寄りに移動、エンジン出力の向上、強制着艦補助装置の装備。
これにASW(対潜水艦戦)・ASST(対艦船捜索評定)機器の搭載なども行われているので、別物の航空機になっています。
機体構造
機体は金属製のセミモノコック構造で、ケブラーやグラスファイバーなどの複合素材が使用されています。
胴体左右にはスライド式の大型ドアが設置され、飛行・着陸時に迅速な乗降が行える様になっています。
メイン・ローターは全関節型で、潤滑が不要で損傷時にも安全性が高いエラストメリック・ベアリングを採用。ブレードは4枚で手動で折りたたむこともできます。
機体後部の水平安定翼は飛行姿勢や速度によって角度が変わる自動可変式になっています。
先に配備されていた航空自衛隊機と同様に、赤外線前方監視装置(FLIR:Forward Looking Infra-Red)、航法・気象レーダー、自動航行装置、GPSなどが装備され、夜間や悪天候でも飛行が行える全天候飛行能力を持っています。
さらに陸上自衛隊向けの機体には、排気口にエンジンの排気温度を下げるIRサプレッシャー(赤外線排出抑止装置)の搭載や、機体後方の空対空ミサイル自衛装置"チャフ・フレア発射機"を装備することで、赤外線誘導ミサイルに対する自衛処置がされています。
より生存性を高めるために機体上部にはワイヤーカッターを設置して、メインローターが電線やワイヤートラップに接触しての墜落防止処置も施されています。
通常、増加燃料タンクを備えているパイロン(短翼)は取り外し可能なオプションで、左右で計約4.5tまでの搭載能力があります。
仕様ではAGM-114ヘルファイア対戦車ミサイルやロケットポッドなども搭載可能で、米軍ではガンシップとして地上部隊支援や制圧にも活用されています。
ですが陸上自衛隊でここまでの武装しての運用が行われることはありません。
航空支援能力
UH-60JAは多用途ヘリコプターならではの多岐にわたる任務に使用されています。
作戦地域での空中機動力を活かした隊員や物資の輸送、機内からのレンジャー隊員によるリペリング降下、災害派遣時には要救助者をホバリングの状態で機内へ吊り上げるホイスト装置も搭載されています。
またUH-1Jよりもエンジン出力が高いこともあり、機体下部に120mm迫撃砲RTなど懸吊して輸送する事も可能です。
他にも12名が搭乗できる広い機内には物資だけではなく偵察用オートバイを収容することもできます。
仕様としてはUH-1Jと同じく機体側面に87式地雷散布装置も搭載可能になっています。
固定武装はありませんが、専用銃座を設置して12.7mm重機関銃M2や5.56mm機関銃MINIMIを使用したドアガン射撃による地上部隊支援も実施できます。
これはアメリカ軍でも同様で、ガンシップとして地上部隊支援や制圧にも活用されています。
配備として航空学校(明野駐屯地)以外の実戦部隊では、相馬原駐屯地の第12ヘリコプター隊、木更津駐屯地の第1ヘリコプター団、西部方面ヘリコプター隊などの空中機動作戦や長距離飛行を行う部隊に配備されています。
また沖縄の第15ヘリコプター隊に配備の機体には離島間の急患輸送任務にも多用されることもあり、万が一、海面不時着した際のフロート等を追加して装備しています。