AAV7の歴史
1972年からアメリカ海兵隊で運用が始まった水陸両用兵員輸送車です。
揚陸艦などの艦艇から直接海上に進出し、海岸部へと迅速に航行して上陸戦闘が行えます。
世界10各国で採用されている車両で、アメリカの他、韓国、イタリア、ブラジルなどが導入。
陸上自衛隊にも島嶼部防衛の強化として配備されています。
1960年代後半に米海兵隊の水陸両用強襲車両として開発されたLVTP7。このLVTP7を近代化改修を施して、名称を改めたのがAAV7A1です。
改修では、電子装置や暗視装置、武装にMk.19グレネードランチャー(40mm自動擲弾銃)等が追加されています。
LVTは、第二次世界大戦頃からアメリカ海兵隊で上陸作戦用に開発されてきた、装軌式(キャタピラ)の水陸両用兵員輸送車です。
AAV7の元になったLVTP7は、LVTP7(Landing Vehicle Tracked Personnel Model 7)の略で、LVTの7番目のバージョンという意味合いがあります。
AAV7の構造と性能
AAV7の車体は、アルミ合金の全溶接構造で、洋上航行のために船型の形状なの特徴的です。
車内には、操縦手、機銃手、車長の3名のほか、後部乗員席に21名が搭乗ができ、後部乗員席のシートを取り外す事で、軽汎用車両を1両も搭載可能です。
この乗員席の隊員は後部の大型ハッチから乗降をして、上陸時には迅速な下車戦闘が行えます。
後部大型ハッチの左右には1基ずつウォータージェットが設置され、洋上では最大13km/hで航行ができます。
ウォータージェットは、高圧ポンプで取り込んだ水を後方からジェット状に噴出して推進力を得ます。
民間の高速船や警備艇などにも使われている方式です。
ちなみにAAV7の場合は、ウォータージェットだけでは十分な速度がでないため、履帯(キャタピラ)も回転させて推進力を得ています。
また、陸上では最高72km/hの速度で走行が可能で、イラク戦争や湾岸戦争では上陸後に戦闘員の輸送にも使用されていました。
しかし、強襲上陸が目的だったため、陸上での防護性能の向上が必要になり、外装への追加装甲としてEAAK(強化型増着装甲キット)という追加装甲が開発されました。
AAV7の側面に装着されている波型の防護板がEAAKです。
EAAKの防護性能としては、14.5mm機関砲弾まで耐えられるとされています。
武装は、当初、12.7mm重機関銃M2のみでしたが、上陸後の攻撃力強化のため、40mm自動擲弾銃Mk.19が追加。重機関銃と擲弾銃の連装砲塔に改修されています。
陸上自衛隊のAAV7
陸上自衛隊では、2014年から調達が始まり、2018年までに参考品を含めて58両を導入。
島嶼部防衛用の装備品として、陸上総隊直轄の水陸機動団に集中配備されています。
配備は、人員輸送車型(AAVP7)がほとんどですが、指揮通信車型(AAVC7)、回収車型(AAVR7)も数両導入しています。
指揮通信車型はアンテナや通信機を装備、回収車型はクレーンが設置されているなど、外観の違いがあります。
ちなみに、防衛装備庁 陸上装備研究所に、参考用の指揮通信車型が保管されています。
米海兵隊だけでも1000両以上運用されていますが、アメリカでの生産はすでに終了しています。
そのため、日本で導入している車両はアメリカで保管されていた車体を新品同様にオーバーホールしたものです。
日本国内でのライセンス生産などは行わず、アメリカからの輸入購入のみです。
今後、追加配備されたとしても、国内製造を行うことはないでしょう。