CH-47チヌークはアメリカのボーイング社によって開発された大型輸送ヘリコプターで、1961年に初飛行した50年以上もの歴史を持つ名機です。
当初は米陸軍の火砲(155mm榴弾砲)を空輸する目的で開発されましたが、現在では世界20ヶ国以上もの国々で採用されているベストセラー機になりました。
陸上自衛隊には1984年から"輸送ヘリコプターKV-107A"の後継として、アメリカ陸軍のCH-47Dチヌークを導入します。これを米ボーイング社と日本の川崎重工による共同生産機として"J型のCH-47Jの調達を始めます。
第1ヘリコプター団、第12ヘリコプター隊、西部方面ヘリコプター隊、第15飛行隊に約60機配備され、現在でも調達が続けられています。陸上自衛隊以外にも航空自衛隊のヘリコプター輸送隊に、各レーダーサイトや基地間の器材輸送任務のため"CH-47J"が配備されています。
CH-47の機体構造と輸送能力
CH-47は機体全体が大きな箱型の貨物室になっていて、外観の特徴でもある胴体左右のカマボコ状の大きな丸い膨らみが燃料タンクです。胴体上部には3枚のローターブレードからなる回転翼を前後に並べて配置しています。
揚力を発生させる2基のエンジンは後部ローター部分を挟む様に設置されていて、万が一片方の機関が停止しても互いの動力軸が連結されているためローターが回転を続けることができます。ヘリはエンジンが停止してもローター自体は回転を続けて徐々に高度を下げていき、冷静に操縦を行えれば完全に回転が止まる前に着陸できます。
この箱型の胴体は前方から後方まで同一形状になっていて、機内に高機動車などの車両を搭載して空輸する事ができます。後部ハッチ自体が開放時にはスロープ状の足場になるので、車両が自走して搭載、降車する際に使える様になっています。
車両・貨物を機内に搭載しないで人員のみを乗せた場合には、最大で55名もの人を空輸することができます。災害派遣時や救助活動では多くの被災者を一度に輸送できるのもCH-47Jの強みになっています。
輸送能力として機内以外にも、機体下部の貨物フックにスリングロープなどを接続することで、軽装甲機動車などの車両や120mm迫撃砲RT等の火砲を吊り下げて空輸することもできます。
他にも水や消火剤を入れられるバンビバケットを貨物フックに取り付けて、山林火災時などの空中消火も可能になっています。多用途ヘリコプターUH-1J/Hにも空中消火バケットを牽吊搭載できますが、バケット消火剤容量がUH-1が約1t弱(約800L)なのに対して、CH-47は約5t(約5000L)と5倍以上になっています。
吊り下げるのは車両や火砲などの重量物だけではありません。演習などでCH-47Jチヌークから直接吊り下げられた武装隊員が、そのまま飛び去って行く様子を目にする事があります。これは"エクストラクションロープ"というものを使って機体を着陸されることなく迅速に隊員を離脱させる方法です。初めて見る方は驚かれると思います。
ちなみにCH-47は機体構造が水密構造になっているため、そのまま海や湖へ着水する事も可能です。そのため訓練などでは大型ヘリが水浴びをする様な姿を目にすることもできます。
CH-47「JA型」について
1995年からはGPSと気象レーダーの追加、燃料タンク容量を増加させて航続距離を2倍にした「JA型」のCH-47JAへ生産を切り替えます。この燃料タンク増加によって固定翼機に比べて航続距離が短いヘリコプターでありながら、約1000kmも飛行可能になりました。陸上自衛隊として離島防衛能力の向上に繋がっています。
J型とJA型ではカマボコ状のタンクの大きさが見た目にも異なるので"機体側面の膨らみが大きく機体前方が黒いのがJA型"と覚えておくとわかりやすいです。
またJA型の中には海外派遣を考慮した改修機も製造されています。後部ハッチと側面ドア部分に12.7mm重機関銃M2の銃架を備えて対地攻撃支援を行える他、ミサイル警報装置やチャフ・フレア発射装置などの自衛装備、防弾板の追加、衛星電話なども備えられています。