82式指揮通信車のコンポーネントを活用して開発された国産の偵察用装輪(タイヤタイプ)装甲車です。1983年より開発が始まり1987年に制式採用されました。
これまで陸上自衛隊の偵察任務には偵察用オートバイを用いた機動偵察がメインでしたが、非装甲のオートバイでは偵察隊員の生存性の問題や、敵からの反撃時の火力不足が課題でした。本装備の配備で敵の攻撃にも耐え、搭載火器での反撃も可能な威力偵察が行える様になりました。
87式偵察警戒車は開発・製造を小松製作所が行い、エンジンなどのパーツに82式指揮通信車と共通のものを使用しています。これにより開発期間の短縮や製造コストを抑える工夫がされています。
車体は圧延防弾鋼板による全溶接構造で作られています。小銃弾を防ぐ程度とされている装甲ですが、舗装路では100km/hの速度で走行が可能なので、特に市街地での高い機動性による強行偵察に効果を発揮します。また一般道を走行する際には、視界の確保などからガラス張りの風防を取り付ける場合もあります。
ちなみに87式偵察警戒車は"RCV(Reconnaissance Combat Vehicle)"と略され、陸上自衛隊公式として"ブラックアイ"という愛称がつけられています。
車体構造
車体構造として、82式指揮通信車をベースにした車体上部に25mm機関砲を装備した砲塔を搭載しています。82式指揮通信車とは異なり砲塔を搭載するため、エンジンを車体中央部から後方へ移動されています。
足回りには被弾時にも走行が続けられるコンバットタイヤ(ランフラットタイヤ)を装備。変速は前進6速、後進1速、操舵(ステアリング)は前4輪の稼働で行われます。舗装路などでは通常、後方4輪で駆動しますが、演習場などの不整地では全輪駆動(6輪駆動)に切り換えて走行します。またサスペンションにトーションバー式が使われていることも不整地での安定走行に繋がっています。
車内には車長、砲手、操縦手、前部偵察員、後部偵察員の5名が搭乗します。車体前部右側にペリスコープを3つ備えた操縦手席、その左側にペリスコープ1つの前部偵察員、車体後部右側にエンジンが搭載。砲塔内には車長と砲手が搭乗します。
乗員の乗り降りは車体前面、砲塔上部、車体両側面、車体後部にあるハッチから行われます。砲塔上部のハッチ前部にはカメラが配置され、車内モニターからでも車外を監視できる様になっています。また微光暗視装置も備えているので、夜間での監視任務にも対応可能です。
87式偵察警戒車の武装
砲塔には主武装として対地・対空射撃が可能なスイスのエリコン社製 KBA-B002 90口径25mm機関砲を搭載しています。この機関砲には二重給弾方式が用いられ、射撃時に徹甲弾(装弾筒付徹甲弾:APDS)と榴弾(HEI-T)の切り替えも可能です。同軸には各戦車や89式装甲戦闘車などにも搭載されている74式車載7.62mm機関銃を備えています。
他にも自衛装備として砲塔両側に発煙弾発射機が装備され、生産時期によって新型には4連装、旧型は3連装になっています。
全国の師団・旅団の偵察隊を中心に、北部方面隊(北海道)の戦車・普通科連隊にも警戒車両として配備されています。