"小型装甲車"の名称で開発が始められた陸上自衛隊の装備としては新しいタイプの装輪式装甲車両です。これまでの輸送装甲車両とは異なり、2~3両で1個小銃班を構成しての運用を目的としています。
開発は1994年から96式装輪装甲車などを製作してきた小松製作所が担当し、1997年~1999年に掛けて防衛省技術研究本部(現:防衛装備庁)によって試作・技術試験が行われます。その後、機動性能や耐弾性能等の実用試験をクリアして2000年に部隊認承。2002年から順次、各地の普通科部隊へと配備されていきます。
ちなみに部隊認承のため制式化の際につけられる"○○式"は名称にありません。また「Light Armored Vehicle:LAV(ラヴ)」と略して呼ばれ、ライトアーマーという陸上自衛隊公式の愛称も付けられています。
近年では、対テロ装備として市街地戦闘や邦人警護などで小型・長距離移動が可能な軽装甲機動車の様な車両の必要性が増しています。
軽装甲機動車の車体構造
車体構造として、外装を覆う装甲板には民間向けの"特殊高張力鋼板"が使用されています。エンジンなどにも民生品が多用され、交換パーツの生産終了や更新時の部品調達サイクルに合わせて製造コストの抑制に繋げています。
いすゞ製の水冷式ディーゼルエンジンを車体前部に搭載し、足回りには四輪駆動のランフラットタイヤを備えています。舗装路では最高速度100km/hでの走行が可能で、オフロードにも適した車体のため演習場などの不整地や瓦礫が散乱した被災地での走破性も高いです。
乗車は左右4箇所と後部1箇所にあるドアから行い、車体上部にも身を乗り出せるハッチが備わっています。乗員は前後の座席に2名ずつ武装した状態の隊員が計4名乗り込めます。見た目よりも車内が広いので、防弾チョッキや小銃携行の隊員がそのまま乗り込んでも狭さを感じない空間が確保されています。
固定武装はありませんが、機関銃を設置できる銃座と防弾盾が車上に備わります。この上部ハッチから隊員が身を乗り出して5.56mm機関銃MINIMIによる射撃が行なえます。また身を乗り出す部分の足元が自由に回転する構造なので、全周囲に対して柔軟に警戒・対処ができる様に考えられています。
他にも同時期に開発された撃ちっぱなし射撃が可能な"01式軽対戦車誘導弾"の射撃も車上から可能です。軽装甲機動車の機動性を活かして誘導弾発射後に速やかに離脱するヒット・アンド・アウェイで、射撃手の生存性も確保できます。
軽装甲機動車の運用
高機動車や73式小型トラック(1/2tトラック)などの非装甲車両(装甲の施されていないトラック)に比べ、車体全体が装甲で覆われている軽装甲機動車の配備で隊員の生存性が高まりました。
また離島などの遠方地域への空輸を前提として開発されているため、C-130輸送機に搭載できるサイズ・重量に抑えられています。この前提条件をふまえた結果、装甲は小銃弾を防ぐ程度にとどまっています。防護性能は公表されていませんが、車体全体が7.62mm弾に耐えられるとされています。
空輸の際には輸送機内部への搭載だけではなく、着陸困難な地域の場合には専用ユニットでの空中投下や、大型輸送ヘリCH-47Jで吊り下げての輸送も行えます。
宇都宮駐屯地の中央即応連隊や国際活動教育隊など、海外派遣の多い部隊の一部LAVには発煙弾発射機が備わった車両も配備されています。PKO(国連平和維持活動)やイラク復興支援で使用された車両には、車体上部に追加の防護板、身を乗り出す隊員をワイヤーや電線などから守るワイヤーカッターの増設がされています。
海外派遣の際にはLAVにエアコンが備わっていたため、外国の兵士から快適だと好評だった様です。イラク復興支援に使用された車両は陸上自衛隊広報センターりっくんランドの入り口にも展示されています。
LAVは装甲車としては1両3000万円とわりとコストが低いため、全国の普通科部隊に年間100両程度のペースで配備が行われ、航空自衛隊にも基地警備用として陸上自衛隊とは異なる塗装の車両が配備さています。