75式ドーザの後継として開発された装甲工作車両。1999年から配備が始まり小松製作所によって製造が行われています。
75式ドーザも同様に操縦席が装甲で覆われていましたが、民生品の中型ドーザを装甲化だけなので土木・工作性能としては単純な整地や掩体壕(戦車や人員が身を潜められる深い堀)を埋めるなど作業が限定的でした。そこでより複雑な陣地・戦車用掩体構築、対戦車障害突破能力があり、戦車などの機甲科部隊に随伴できる機動力を持つ施設作業車が開発されました。
施設作業車は73式牽引車の車体をベースに、足回りやエンジンに92式地雷原処理車や87式砲側弾薬車と共通する設計を流用。共通化させることで開発時間を短縮させることに繋がっています。
ちなみに施設作業車は"EV"と略されることがありますが、これは"EV:Engineer Vehicle(エンジニア・ビークル) = 工兵作業車"のことです。
車体構造
構造として、車体前部に左右10度の可動域がある排土板(ドーザーブレード)、車体右側には伸縮式ショベル・アームを搭載しています。走行時はショベル・アームを後方へ収め、掘削時には前方へと回転可動させて作業を行います。
このショベル・アームは土木作業だけではなく、敵陣地前方などに構築された地雷原の除去にも使用。掘削バケットの爆薬搭載用扉から専用爆薬を地雷原へと設置して爆破除去します。ちなみに爆薬は車内の専用スペースに格納されています。
防護性能として、前線での作業を想定しているため車体全体が防弾鋼板で覆われています。自衛用の武装は75式ドーザと同様にありませんが敵ミサイル(誘導弾)への防護装置として、レーザー検知装置と連動した発煙弾発射機(スモークディスチャージャー)を搭載。煙幕で敵の視界をふさぎ離脱することで生存率の向上に繋がっています。
そして施設作業車最大の特徴でもあるのがコンピュータ制御による土木作業の自動化です。戦車用掩体壕などがプログラミング化されていて車体各部にあるセンサーのおかげで正確に自動構築できます。水平地に限定されるなど条件はありますが作業開始位置さえ設定してあげれば構築してくれます。
各方面隊の施設科部隊への配備が進められていますが、調達価格などから75式ドーザと完全に交代するまでには時間が掛かりそうです。