大久保駐屯地 創立65周年記念行事イベントレポート

2022年5月29日(日)に、京都府 宇治市に所在する陸上自衛隊 大久保駐屯地で「大久保駐屯地 創立65周年･第4施設団創隊61周年記念行事」が開催。事前申し込みなしの一般開放は3年ぶりです。
大久保駐屯地は第4施設団本部、第7施設群、第3施設大隊など施設部隊中心の駐屯地です。
→「大久保駐屯地 創立65周年･第4施設団創隊61周年記念行事」のイベント情報はこちら

9:00開門ですが、7:00頃から10数名がすでに待機されていました。
当日は、暑すぎるほどの晴天で、熱中症にならなか心配になるほどでした。

開門時間になって入場すると、ご当地ゆるキャラ達が歓迎してくれました。
左から「おうじちゃま(宇治市)」「しかまろくん(奈良市)」「ぼっくりん＆まつりん(美浜町)」「いなりん(豊川市)」「ミコロ･ハコロ(岡山市)」「吉宗くん(和歌山市)」です。

ゆるキャラ大集合から坂を下って式典会場へ！
観閲台と逆側には施設部隊の駐屯地ならではの、土木車両のヤードが見えます。
式典開始まで暑いですがここで待機して開始を待ちます。

9:30頃から、観閲部隊が徐々に式典会場へ集まってきました。
えび茶色のスカーフを付けているのは施設科部隊です。

白いスカーフで初々しい隊員達は、今年度入隊された新入隊員です。
将来、災害派遣等で出動する機会もあるでしょう。がんばってください。

一般部隊が会場に集まると、小型トラックに搭乗した各部隊長が進入。部隊旗と共に降車して部隊前に整列します。

部隊長へ敬礼！

部隊の集合にあわせて各観閲部隊を順に紹介。
今回の式典会場が、観閲台周辺の一部にしか放送が聞こえないスピーカー配置になっていました。
是非、会場全体に聞こえる様に改善していただきたいと思います。

そして、各部隊を指揮する「部隊指揮官」。第4施設団副団長です。
最後に黒塗りの車両に搭乗して「観閲官（第4施設団長･駐屯地司令）」が入場。
これより記念式典が開始されます。

執行者が観閲台に登壇。音楽隊演奏により栄誉礼が行われます。
観閲台へむけて観閲部隊が敬礼で敬意をあらわします。

国旗入場。観閲台へ登壇。
会場内の全員が起立して、国歌吹奏にあわせて国旗に注目します。

続いて、1/2ｔトラックに乗車した駐屯地司令による「巡閲」
各部隊が問題なく指揮統制されているか確認していきます。

駐屯地司令による祝辞。他の駐屯地行事に比べても非常に長かった。
15分はお話されていたでしょうか。この気温で新入隊員を中心に倒れる方が続出しました。

大切な祝辞ですが、現場の状況にあわせて臨機応変に変更するなどが必要ではないでしょうか。

このあとも、来賓祝辞、祝電披露、感謝状など、隊員、来場者全員が過酷でした。

すべての式典内容が終わり、観閲行進へと移行します。
観閲行進準備として、部隊長は車両へ。参加部隊は駆け足で会場を離脱します。

観閲行進の最初は、陸上自衛隊 中部方面音楽隊。
マーチングによる行進を行い、行進演奏をする場所へ。

音楽隊に続く徒歩部隊は、新入隊員による行進。
観閲官へ敬礼しながら行進を行い、観閲台を通過すると駆け足で会場をあとにします。

車両部隊の行進が開始！
できるだけ行進した車両を紹介しますが、すべてではありませんのでご了承ください。

まず車両部隊先頭は、部隊指揮官が1/2ｔトラックに搭乗して行進。

大久保駐屯地の災害派遣の表示を付けた車両。
1/2ｔトラック、3t半トラック、偵察用オートバイもありました。

「偵察用オートバイ」「野外炊具1号(改)」です。
野外炊具は45分以内に最大250人分の焼く、炊く、煮る等の調理が可能な、災害派遣でも活躍する装備です。

「道路障害作業車」
障害構築以外にも電柱を立てたりもできる作業車です。

施設部隊の装備をセミトレーラーに搭載して行進。
「油圧ショベル（グラップル付き）」です。
後ほど、装備品展示でグラップルの動作展示をやってくれます。

「1t半救急車」「1ｔ水タンク車（牽引）」
この自衛隊仕様の救急車は消防の救急車と同じく、公道を緊急走行できる指定車両です。

こちらもセミトレーラー搭載車両です。
前後でことなる土木車両が搭載されています。

グラップルではなくバケットの「油圧ショベル」
排土板で土砂を押し出す「中型ドーザ」

装甲が施された戦闘地域でも活動できる「75式ドーザ」
通常走行時は、排土板側を後ろにして走行します。
運転席には前後に操縦桿等があるので、作業時は排土板側にむいて作業します。

河川に柱を立てて橋を掛ける「81式自走架柱橋」
自衛隊カラーのOD色に塗装された「トラッククレーン」です。

訓練展示でも活躍する「92式地雷原処理車」
その発射するロケットを運搬している「処理ロケット運搬車」です。

処理ロケット運搬車は初めてみました。
はじめは魚雷でも積んでいるのかと思いました。
こういうマニアックな装備品が見られるのも施設団本部のある駐屯地ならではです。

「92式浮橋」の橋節運搬車と動力ボート運搬車です。
行進さけではなく、装備品展示にも展示され、渡河ボート試乗の桟橋としても活用されていました。

こちらもセミトレーラー搭載。「自走式破砕機」「アスファルトフィニッシャー」
水陸両用で海岸沿いに地雷を敷設する「94式水際地雷敷設装置」

似ている様で機能が異なる車両です。
大型のフォークリフト「フォークローダー」
バケットで土砂を積み込みする「バケットローダー」

大久保駐屯地の観閲行進の目玉でもある、第307ダンプ車両中隊の観閲行進。
「特大型ダンプ」が荷台を上げながら隊列を組んで行進するのは圧巻です。

「07式機動支援橋」
手前が橋節をアームで架設していく架設車。四角いのが橋節運搬車です。

牽引しながら対戦車地雷を敷設していく「83式地雷敷設装置」

指揮官車両としても運用される「82式指揮通信車」

LAVの愛称で呼ばれる小型の装甲車「軽装甲機動車」
車上には隊員が5.56mm機関銃MINIMIを構えています。

訓練展示で模擬支援射撃をする「120mm迫撃砲RT」
自走はできないので、高機動車にて牽引移動して運用します。

化学剤等を検知･識別する「NBC偵察車」
威力偵察に活躍する「87式偵察警戒車」

車両行進の最後は、訓練展示参加に来場された「74式戦車」です。
今津駐屯地の第3戦車大隊から来ています。
訓練展示だけではなく体験試乗もこの戦車で行っていました。
【陸上自衛隊 今津駐屯地】
→ 今津駐屯地公式サイト

観閲行進の最後を飾るのは、航空機による祝賀飛行。
「多用途ヘリUH-1J」
「対戦車ヘリAH-1Sコブラ」

以上で、観閲行進は終了。続いて音楽演奏、訓練展示が実施されます。

訓練展示の準備の間、音楽隊による演奏が披露されます。
演奏は、中部方面総監部が所在する伊丹駐屯地に所属しています。
【陸上自衛隊 中部方面音楽隊】
→ 中部方面音楽隊公式サイト

ちょうど見学場所からは演奏の様子が見えませんでしたが、自衛太鼓演奏を行われました。
セミトレーラーに搭載された太鼓部隊が力強い演奏・演舞を披露。
大久保駐屯地の「京都三施太鼓」による演奏でした。

82式指揮通信車が観閲台前に進入。観閲官に訓練開始の報告を行います。
ラッパ吹奏を合図に訓練展示が開始されます。

【状況開始！】

敵の状況を確認するため、多用途ヘリコプターUH-1Jによる航空偵察を実施。
同時に、小型ドローンによる状況偵察も行われていました。

より詳しい敵情を確認するため、地上偵察が実施されます。
偵察用オートバイが進入。機動力を活かして情報を収集します。

偵察部隊に気づいた敵が攻撃を仕掛けてきました。
偵察隊員はオートバイを盾にして反撃。敵火力を確認しつつ小銃射撃を実施。

こちらも敵に対抗できる火力が必要と判断。偵察部隊は離脱します。

同時に後方より威力偵察を行っていた、87式偵察警戒車も機銃を射撃しながら離脱します。

敵の別働部隊が建屋を占拠しているとの情報が。
多用途ヘリUH-1Jがレンジャー隊員を乗せて飛来。

ヘリからレンジャー隊員がリペリング降下を実施。建屋の屋上よりレンジャー隊員が進入します。

降下したレンジャー隊員が別働隊を制圧するため、建屋内に進入していきます。

敵部隊への火砲による支援射撃を実施します。
火砲の進入を援護するため、87式偵察警戒車、軽装甲機動車が前進。

機銃の射撃で敵を牽制！

その間に、高機動車に牽引された120mm迫撃砲RTが射撃準備を行います。

120mm迫撃砲が模擬射撃を実施。
敵陣地に弾着！この迫撃砲は最大約13kmの有効射程があります。

敵陣地前には地雷原が構築されています。
このままでは部隊が前進できません。
92式地雷原処理車による障害処理を実施します。

92式地雷原処理車の投射体勢に！
処理ロケット（模擬）が投射されました。

敵陣地前の地雷原へむけて爆薬付きロケットが飛翔していきます。
実際の処理ロケットも、爆薬付きワイヤーを接続したロケットを飛ばして処理します。

地雷原にロケットが落下。爆薬を起爆して、地雷原を誘爆処理します。
これで安全に車両が通れる道ができました。

模擬爆破でしたが、火薬の量がすごかった。

74式戦車が前進。
敵トーチカにむけて射撃。105mm戦車砲が直撃してトーチカが吹き飛びます。

再度、74式戦車が射撃！もう一つのトーチカも吹っ飛びます。
爆発の衝撃は隣の歪んだ的を見ていただければわかると思います。

敵トーチカ破壊後、74式戦車は同軸機関銃を射撃しながら前進していきます。

そのまま敵陣地バリケードを突破！
87式偵察警戒車なども、あとに続いて敵陣地へと突撃します。

軽装甲機動車から隊員が降車しての下車戦闘も実施。
小銃射撃により敵残存部隊を制圧。

以上、施設科、普通科、機甲科、航空科連携による訓練展示でした。

【状況終わり！】

式典、訓練展示後、装備品の体験試乗なども行われました。
大久保駐屯地ならではの、渡河ボートの体験試乗をしてきました。

式典会場のすぐ隣に、渡河ボートの試乗会場があります。
駐屯地内に小さな川のような池があります。

渡河ボート待機列には、日よけとして、バラキューダ（偽装ネット）が掛けてあります。
施設部隊の活動、個性的な注意書きなどもあって、待機時間も楽しめました。

渡河ボートに乗る際は、安全のために身を乗り出したり、立ち上がったり、船上で筋トレしたりは危険です。
あと、乗船の際は迷彩の救命胴衣を着ます。

渡河ボート体験は、大久保駐屯地に来た目的の一つでもあります。
船外機（動力モーター）付きなので、かなりのスピードがでます。

折り返し地点から、隊員の方のサービスでボートを左右に揺らしてくれました。
それでも安定して転覆する様な感じにはなりません。河川での横波等でも安定する体験ができました。

安全といっても、もしもの場合に備えて、安全確認・救助要員が常に備えています。
緑十字の旗を掲げたボートが見守ってくれていました。

渡河ボート体験は、先着順で整理券配布はありませんでした。
ボート以外の戦車や車両は開門後に配布される試乗券がないと乗れません。

その試乗券がないと乗れない、74式戦車です。
訓練展示で使用した戦車に、カゴを取り付けて体験試乗に使っています。

74式戦車もいつまで運用されるかわからないので、本当は乗りたかったですが。
他にも、94式水際地雷敷設装置や大型トラックなども体験試乗をやっていました。

式典会場は、訓練展示後に、装備品展示会場になっています。
施設装備以外にも訓練、行進に参加した装甲車なども展示してくれています。

この、グラップル付きの油圧ショベルは、動的展示も実施してくれました。

油圧ショベルは基本、バケットが取り付けられています。
換装することで、瓦礫や木材などを掴める「鋼鉄の爪」に変えられます。
他にも岩を砕く削岩機などを取り付けられたりと、汎用性が高い重機です。

動く展示ということで、丸太をつかんで移動させてくれています。
グラップルのみを開閉させた時の、カチンッという金属音は素敵です。

装備品展示中、2時間くらいずっと油圧ショベルの動的展示をしてくれていました。
素晴らしい展示、本当にありがとうございました。

ここからは、展示されていた装備品を紹介します。
訓練展示最初に搭乗した「82式指揮通信車」
「軽装甲機動車」は車内に乗せてもくれました。

こちらは「92式浮橋」
渡河ボート体験乗船の船着き場としても、橋節部分が展開されていました。
車両運搬時、展開時が同時に見られました。

これも架橋装備の「81式自走架柱橋」
74式戦車など、最大42ｔまでの車両を通過させられる性能があります。

25mm機関砲を搭載した「87式偵察警戒車」
化学剤・生物剤・放射線から乗員を守ってくれる「NBC偵察車」

「高機動車」は後部、運転席共に乗車体験ができました。
子供と乗って記念撮影されている親子連れがけっこういました。

訓練には参加しませんでしたが「155mm榴弾砲FH70」も展示されています。
支援射撃に活躍した「120mm迫撃砲RT」。
両火砲ともに、たくさんの方々が集って興味津々に見学されていました。

120mm迫撃砲RTは、模擬砲弾、電気式信管測合器も展示していました。
電気式信管測合器で入力された機器を砲弾内に組み込むと、射程の調整、着発射撃、時限式など、様々な設定がデジタルでできます。

会場に設置されていたこの金属の橋も、ちゃんとした装備品です。
観閲行進に参加していた「07式機動支援橋」の貸節部分です。

気が付かないうちに装備品を体験できるなんていいですね。
この架橋は、最大60ｔの車両を通過させられるので、90式戦車などが乗っても大丈夫。

装備品ヤードには、展示されていない施設装備も見られます。
自衛隊仕様のキャリアダンプ「資材運搬車」
油圧ショベルと掩体掘削装置。似ていますが、アームの付け根が回転する機構になっているのが掘削装置です。

5月下旬でしたが、真夏の様な気温と日差しでした。
この季節の京都を過酷ですね。
戦闘部隊がいる駐屯地ではありませんが、土木支援の施設部隊だからこそ面白い展示がみられるものです。

茨城の勝田駐屯地もそうですが、施設科部隊の駐屯地は珍しい装備が多い。
「任務達成無事かえる」に見守られながら、駐屯地を後にしました。